『しあわせな人生の選択』死の際のかっこいい4日間を観て、自由に生きると確認する映画
この世界で最も落ち着ける場所かもしれない。
好きなジャンルはヒューマンドラマだけど、ひとが死ぬものはあまり観ない。特にそれがありきのような、御涙頂戴な展開は避けたい。死んで悲しいのはそのひとが大切であったからで、人生でままある経験でもない。そして感情移入をしてまでわざわざ体験することでもない。人生にはもっと、普遍的で乗り越えるべき苦しみはあって、だからそっちのほうを観たい。
今回観たのは、『しあわせな人生の選択』(原題『Truman』=飼い犬の名前=全然邦題とニュアンスが違う)スペインはマドリッド。余命わずかな男のもとに、カナダに住む親友がやってくる。4日間の滞在の中での、死が迫った男と親友と飼い犬との交流を描く映画だ。
そう、男は余命わずか。死ぬことが確定している。
でも、観た。
単に映画館を信頼していた。この条件下で一体どんな展開をみせるのか、それが関心だった。
結果は、見惚れた。
泣きながら、笑った。笑いあり涙ありではなく、笑顔になるのに涙が出てくる。そんな感じ。
ひとの死は重くて、触れにくくて、語弊を恐れずに言えば厄介である。そんな目を背けたくなる状況を前提として、
死を間際にした人間ならこうするだろう、
それに会いにきた人間ならこうするだろう、をことごとに覆してくる。
非常識なコメディではない。
ごく自然に、しかしユーモラスに生きる。
大して立派な二人ではないのに、すごく余裕のある大人に見える。
きっといままでいろいろな挑戦を失敗を成功を経験してきたのだろう。全てを受容する。こんな自由な大人になりたいと思う。
本作はスペイン、アルゼンチンの合作のようだ。
きっと日本で作られることはないだろうな、と思う。
こういう死ぬモノドラマならいいのだけど。