三宅島の自然に触れたら風邪が治る(ほんと)
三宅島へ行ってきた。
最大限の集中力をもって金曜日に定時退社して一時帰宅し、シャワーを浴びて今にも海に飛び込めそうな格好になって、一週間の憂さ晴らしをするかのように土曜日の午前を犠牲にして呑みに耽った酔っ払いたちが帰る電車と逆方向に乗り、閑散としたゆりかもめに乗って竹芝駅で降りれば、老若男女の眠気とワクワクが入り交じった竹芝桟橋に着く。
おでこには冷えピタという盾を、手には角の小瓶という矛を携えて乗船。
甲板に出てレインボーブリッジを見送ると、レジャーシートを敷いて船上の金晩。
眠くなったら和室で雑魚寝。
三宅島は伊豆諸島の遠い方だから、橘丸。もう片方のさるびあ号よりも清潔で寝心地もよかった。
三宅島には朝の5時に到着。早すぎる。
宿のお迎えを利用して早速チェックイン。
部屋利用の休憩は別途料金がかかるから、浜辺で寝ようとするが、台風5号の力で雨に打たれ風に吹かれ波も荒れる。
仮眠を取れば雨の冷たさに起こされついに断念。雨に歌いながら歩いていると、宿『広丸』の車が。台風の中に出ていった彼らは無事だろうかと心配して迎えに来てくれたのだ。
結局、部屋で泥のように熟睡。
起きてみたら、ああ、あの荒れた天気は昨日のことかと錯覚を起こすほどの、ウソのようなカンカン晴れ。
しかも宿のおかあが格安で『広丸』車を貸してくれる。至れり尽くせり。
島で遊ぶとなったら、ドライブして歩いて、山に登って、池でボーとして、浜で寝て、海で泳ぐしかない。何をしても自然が付き纏う贅沢な時間だ。
2000年の噴火と島民避難が記憶に新しい三宅島だが、この火山は結構頻繁に噴火しているようで、ジオパーク指定の、火山の足跡を学べる箇所が多くあった。
噴火口跡で池ができて、溶岩の流れ出たあとで岩や山肌が黒くなり、浜辺は黒い石と砂で覆われていた。
新島には白浜、神津島には砂漠があったことを考えれば、この黒さは三宅島の押しも押されぬ特徴と言える。
夜になれば、たまたま「島が一年で一番盛り上がる」お祭りがあった。本土では雨の中、なんか行かないと損した気になってとりあえず出掛けてきた人たちでごった返す隅田川の花火があった時に、三宅島では車で会場に乗り入れるというおよそタブーな行為を受容できる600発の小さな花火大会が行われていたのだ。
花火とは花火そのものが良いのではなくて、「夏の夜の心地よい気候の中、外でのんびりできる口実」として非常に優れているのではないか。そこにあるのは花火でも星でもイルミネーションでもビールでも、なんでもよくて、ただ誰かと心地よい夜のひとときを過ごせることが重要なんじゃないかと、示唆に富んだこじんまりとして静かな花火大会であった。
その日も呑んだくれて、次の日は畳でゴロゴロしてはスイカだのところてんだのを頂きまた畳でゴロゴロするというさながらおばあちゃんちを楽しんで、帰った。
いつのタイミングだろう。
気が付いたら咳も熱もなくなり、持っていった冷えピタがゴミになった。