キャパンのネゴト

うまく働けない欠陥労働者が日々考えることと目指すもの

ほんと、オチもなにもない、ただの夢のはなし

読書をしていて眠くなったら昼寝するという行為に、至福を感じる一方で、読書後の昼寝は本の影響が色濃く出るから、夜にいつも通り寝てみる夢とは趣の違った夢を往々にしてよくみる。気持ちよく寝ておいて、終盤は早く起きたいと思うような、そんな居心地の悪い夢の録。ほんと、オチもなにもない夢のはなし。

 

 

時は高校生。場所は高校の駐輪場。どこにでもある駐輪場とどこにでもいる高校生。

土曜日の昼間(中高では土曜日にも授業があった)、学校から帰宅しようと駐輪場に向かって歩いて行たら、年下そうな、小さめの女の子がなにかを私の自転車のサドルの上に置いて、去ったのが見えた。なにをしていたのか、訝しみながらも歩いて駐輪場に着くと、そこにはしばらく前の状態の、私の携帯電話が置いてあった。(この携帯電話の仕様は、現在、私が使っているものだった)「しばらく前の状態」とは、手に持っている「私の」携帯電話よりも若干キレイで、シールもそれほど貼っていない状態であった。(私の格安携帯電話はなんか寂しく、シールをもらうとベタベタと貼ってしまっている)

 

これはどういうことかと気になり、それを置いていったであろう、女の子を探しに自転車に乗った。(自分の携帯が実は2つ存在していたこと自体には、大して驚くことはなかった。以前から、自分が送った覚えのないメールがあったり、した覚えのないやりとりがあって、どこかでもう1台の携帯電話があって、それで誰かが適当な具合に操作していると考えて、それがしっくりきていたからだ)ちょうど全校の下校時、たくさんの生徒が駅に向かって歩いていた。なぜかわらわらとひとが増えてきて、これは見つかりそうにないな、と半ば諦めつつも、しばらく探した。

 

するとふと、ネコが私のところにやってきて、それを見て、ああやっと見付けたよ。とホッとした。家にそのネコとそのネコが持っている私のもう1台の携帯電話を連れて帰ることが出来た。(この時には、私が探していたのはネコであり、また持っていたはずのもう1台の携帯電話もそのネコの手にあったが、そのことも特に疑問には思わなかった)

 

帰宅後に家にいた3人の家族に事情を説明すると(4人家族だ)、ネコは突然、おじさんに変わって、そのおじさんは、携帯電話は始めから2台あったこと、そのうちの1つはずっと別の世界で密かに使われていたことを教えてくれた。そのおじさんは、おじさんではあるけれど、妙な安心感があって決して不快さを与えるタイプのおじさんではなく、話しも想像通りで納得して聞いていた。きっと、私の関与し得ないところで、私に関する物事は進んでいったのだろう。それは携帯電話に限った話しではないはずだった。

 

携帯電話の秘密を教えてくれたこと、携帯電話を持ってきてくれたことに御礼を言うと、そのおじさんは外を見てごらんという。見てというからそうすると、イヌがいたけど、それはただテレビのイヌの映像がガラスに反射していただけで、本当は、ネコが2匹、じっとこちらを見て座っていた。ネコがいる、というと、そのおじさんはネコの姿になって、でも顔だけおじさんのままで、窓を開けて庭へ出て、そのネコたちのところへ行った。

 

私の家族3人は、ネコがおじさんになったところから、終始、ポカンとしていて、おじさんが出ていくと堰を切ったように、なんだあれは、と捲し立てた。私は、自分がおかしくなったと思われたくなくて、必死に、一から、一緒に見ていたことを説明した。ちゃんとみんなで同じ光景を見ていたこと、それが不自然な行程をとっていなかったこと。そしたらお父さんは、そもそもネコ(おじさん)が家に入ってきたときにそいつの後ろを歩かなかったから、怪しさを見抜けなかったんだと言っていた。その主張はよくわからなかったけど、とにかくおかしくなったのが自分だけではないと知って、ひとまず安心した。みんながおかしいなら、それはそれで安心できるものだ。

 

そんな会話をしている最中も、顔がおじさんで体がネコなネコは、ガラス窓の外をウロウロしながら、他の二匹の猫とともにこっちを見ていた。それが何分も何十分も続くと、次第に気味が悪くなっていった。顔がおじさんのネコにひたすらに見つめられると、家族での会話が空虚に感じてきて、早く帰ってくれないかな、携帯電話はもう受け取ったのに、これ以上、一体何の用があるのだろうと、そこで初めて恐怖を感じた。それで、それでもどいてくれなくて、ずっとこっちを見てくるから、そのネコから逃れるように、目を覚ました。

 

目を覚ますと、そこはいつもの私の家なんだけど、なんか誰かに見られているような、いまこの瞬間まで誰かがそこにいたような、気色の悪い感じが残った。

逃げ切れなかった。